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パーフェクト・ワールド・エンド0-4
「分かってます」
できるだけ平坦な声音になるように意識して、応じる。柏木の言っていることは正しい。何も間違っていない。差別を肯定するつもりはないが、区別は必要だと理解しているし、そうあるべきだ。
水城のように、すべてが平等でありたいと声高に言うことが、ずっと理解できなかった。そして今もやはり、共感も理解もできないままだ。
「君の同室者は中等部の頃からずっと高藤だったと記録にあるが、何か問題が起きたことはあったか? 例えば、喧嘩だとか、まぁ、……好きだの何だ、そう言った感情面での話でも良いんだが」
「小さな喧嘩ならしたことはありますけど、べつに」
聞き取りだと行人は割り切った。柏木とて、後輩の色恋沙汰など知りたくもないはずだ。実際、二人の間にはそう言った空気は存在していなかった。少なくとも、言葉にできるようなものはなかった。
――それなのに、成瀬さんも、この人も、なんで当然のように言うんだろう。
思い出した声に、ぎゅっと心臓が掴まれたように痛んだ。たぶん、言葉にすらされないままに、振られた。そして、べつの相手を宛がわれた。酷いと笑いたくなるほどなのに、なんで嫌いになれないのか。
「そうか。――ところで、この学校は元々、俺や君みたいに線の細い生徒はアルファと組ませたがるんだ。まぁ、お守りを押し付けていることと同義だな」
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