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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 5-2

「え?」  その反応で十分だった。なんでもないと告げる代わりに、にこりとほほえむ。 「選挙のこと、なにか個別で頼んだりしてたかなって。それだけ」 「いや、俺からはなにも言ってないけど……」  そこまで言ったところで、探るようだった表情を皓太がゆるめた。いつのまにか大人びた表情で、気にしてるんだ、と呟く。  思い当たるかもしれないという予想はしていたものの、言及はしないだろうと踏んでいたのだが。 「意外だな」  続いた台詞に、曖昧な苦笑を刻んで、首を傾げる。たしかにそのとおりだと思ったからだ。  茅野に勘づかれたときは、面倒だという感情が九割だった。皓太がやってきたときは、余計なものを見せたという罪悪感を抱きはした。けれど、これとはまったく種類の違うものだ。 「まぁ、でも、そうだな」  悩むように手元に視線を落としたまま、皓太が口を開く。 「なんか、俺が言ったことにしたほうが良かったかなって気がしてきたんだけど」 「なに?」  含みしかない言い方に、笑って続きを促せば、可能性の話だけど、ともう一度前置いてから顔を上げた。 「俺の家から見えたってことは、祥くんの家からも見えてたんじゃないかな」

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