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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 5-3

「……それは、あるかもな」  立地を考えれば、あたりまえの話だった。考慮したくなかったがために、半ば無意識でその選択肢を排除していたのかもしれない。 「うん。その、本当に『かも』な話でしかないんだけどね。璃子さん、向原さんのこと気に入ってるから。個人的に連絡取ったりしてても、おかしくないかなーって」  思っちゃって、と取り成すように皓太が苦笑する。その態度に合わせて、成瀬も苦く笑った。  いかにもあり得そうなことだった。  ――ところで、あなたはいつまでアルファの顔をしているつもりなの?  ――ちょうどいい相手もいるじゃない。  記憶から排除していた台詞が、頭の中で回り始める。 記憶から排除していた台詞が、頭の中で回り始める。それこそ、いまさらだ。いまさらすぎて、言われるいわれもないことだと、そう思う。けれど――。 「あの、祥くん?」 「ん?」  戸惑いがちな呼びかけに、視線を向ける。自分のところの親子関係が健全ではないと見聞きしてしまっているせいか、幼馴染みは心配そうな顔を隠そうともしていなかった。 「俺が口出すことじゃないけど、もしかして、おばさんになにか言われたりしてた?」 「いや」  そういうことじゃないよ、と柔らかくほほえむ。いつもどおり、心配をさせないように。 「むしろ、ちょっと頭が冷えたかな」

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