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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 5-9

「出る幕じゃない、ね」  そう繰り返した長峰が、やり返すように笑った。 「つがいにできるわけがないからか?」 「またそれ?」  困ったように、成瀬は再び苦笑してみせた。夏季休暇前にも一度言われた話だ。そのときも、煽ってようやく飛び出した、という程度ではあったわけだが。  重要なのは「そういう噂があること」を認識して多少なりとも意識していることだ。 「べつにどう思われてもかまわないんだけど。……まぁ、かまわないというか、疑ってる人間になに言ったところで意味もないと思うし」  IDを提示して黙らせるような野暮な真似をするつもりもないし、地雷が水城であることにも間違いはない。  ーーまぁ、あと一押し、二押しってところかな。 「でも、そうだな」  そう踏んで、にこりと成瀬はほほえんだ。母に似ていると評される自分の顔は好きではない。けれど、どういうふうに表情をつくれば、そう見えるのかは知っている。 「そんなに気になるなら、確かめさせてやろうか?」  相手の顔色が変わったタイミングで、「まぁ、冗談だけど」と、いつもの調子で笑う。 「でも、似てただろ、水城に」  こういう言い方、選ぶと思ったんだよな、と軽く嘲る。  長峰の反応で、水城ならそうするだろうという予想でしかなかったものが、確信に変わった。  わかりやすく、あからさまに。オメガだと主張するやり方で。アルファを誘って、秩序を壊した。  異分子だと承知の上で自分が放置していた過去が今を生んだのだとしたら、正してから終わるべきだ。  それに、とも思う。そのくらいしてやらないと、皓太に対しても申し訳が立たない。

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