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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 5-12
「……性格悪いよな、そういうとこ」
「それこそ、おまえに言われたくはないな」
それは、まぁ、そうかもしれない。苦笑に苦笑で返してから、「ちょっと話は変わるんだけど」と切り出す。
幼馴染みたちの姿は、もう見えなくなっていた。
「なんだ?」
「一応、考えてはみたんだよね。人を好きになるっていう感情について」
「おまえが」
考えろと言ったのは自分のくせに、本当に考えているとは思っていなかったらしい。確認してくる声は、どこまでも意外そうだった。「ひどいな」とおざなりに笑って、言葉を継ぐ。
考えていたということは嘘ではない。ふっと馬鹿らしくなったということも事実ではあるが。それまでは、考えてはいた。
「たとえば、長峰だったらさ。なんでかはわからないけど、水城のことが好きなわけだろ」
「……おまえ、それを言ったのか?」
「言った。ついでに、好きなのにほかの男と寝るのはいいんだ、とも聞いた」
「…………」
「そうしたらあいつ、つがいにできるわけもないんだから、しかたないって、自分も被害者みたいな顔して言うから、ちょっと腹立ったんだけど」
さっき言った、「腹が立つこともある」はそれね、と黙り込んだ茅野に告げる。雑な煽り方だとでも思っているに違いない。
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