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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 6-1

[6] 「もうべつにいいけど、あいつ、最近また一段と苛々してねぇ?」  屋上の扉を乱雑に閉めて近寄ってきた篠原に、開口一番そう訴えられて、向原は眉をしかめた。  篠原の言う「あいつ」が誰なのかは聞かずともわかるし、「また一段と苛々している」も言われなくとも知っている。生徒会室で指摘して以降のことだからだ。けれど。 「べつにいいなら、わざわざ俺に言うなよ」  というか、こんなところまで探しに来て、言うようなことでもないだろう。  発展性のない話は面倒でしかないし、なにより時間の無駄だ。フェンスに肘をついて煙草をふかしたまま、切り捨てるようにしてもう一言を告げる。 「ほっときゃいいだけだろ。逆に、なんでできないんだよ」 「おまえが、生徒会室に顔出す回数減らしたからに決まってるだろうが」  なにがどう決まってるんだ、と呆れたものの、向原はなにも言わなかった。眼下を見下ろしていると、というか、そもそもさ、と篠原が言う。 「怒ってないことにしてるんじゃなかったわけ?」 「面倒になった」  そうやって、取り繕ってやることも、知らないふりをしてやることも、なにもかもすべてが。  叩いた灰が風に乗って舞っていく。問いあぐねている調子で黙り込んでいた篠原が、そこでひとつ溜息を吐いた。

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