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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 6-5

「それでどうにかなるならな」  そんなわけはないと知っていたので、おざなりに切り捨てる。何度も何度も試みて、そうして思い知ったことだった。  だから、なにもするつもりはない、と決めていた。話を終わらせようと、それに、と向原は続けた。 「見てたらわかるだろ。頼まれてやったこと以外、なにもするつもりはない。これからも」  昔のように過度に荒らすつもりもなければ、必要以上に調整するつもりもない。向こうからのリアクションがないうちは。 「いいのか、それで」 「もともと、そういう話じゃなかったか?」  窺うようなそれを笑えば、茅野もまた苦笑いを浮かべた。  なにひとつ折れなかったのは成瀬で、だから、妥協点を見つけてやったのだ。その場に立ち会っていたこの男が覚えていないわけがない。  一方的な言い分に、こちらが切れるとでも思ったのか、らしくないはらはらとした顔を見せていたくらいだ。  できる範囲の妥協をつけただけで、向原は、今もなにひとつ納得はしていない。 「まぁ、それは、そうなんだけどな。とは言え、あの場に同席した者の責任として、気にはなるというか。そういう意味で、多少は積極的に動いてやっているつもりなんだが」 「……」 「それに、なにも起こさせないと言っただろう」

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