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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 6-6
たしかに、そんなことを言っていたな、と思いつつ、「べつに」と半ばひとりごちるように呟く。
べつに、どうでもいいと言えば、どうでもいいことだったからだ。意味のないことをするつもりもない。
そういう意味で言えば、誰が誰を選挙に擁立しようと、そこにどんな思惑があろうと、どうでもいいと言えば、どうでもいいことではあった。
――面倒だけどな、ぜんぶ。
半ばおざなりにそう判じて、眼下を見下ろす。
篠原は篠原で、あれだけ好き放題に不義理を責めていたくせに、自分は自分で「今日はもう無理」の一言でさっさと帰っていくあたり、都合の良い性格をしている、とも思いながら。
授業が終わってしばらく経つが、校舎から出てくる生徒の姿はまだそれなりに多かった。
その中で、生徒会室のある棟に向かう後輩の姿があった。そのまま予想どおり建物に消えていくのを見送って、呆れ半分で向原は笑った。
「……律義なやつ」
わざわざ挨拶しにいく義理はないと思うのだが。そういうものでもないのだろうか。そういった人間関係は面倒だとしか自分には思えなかった。
また一本取り出した煙草を銜えるでもなく指先に挟んだまま、風紀委員のたまり場である建物の方角に目を向ける。そちらから出て向かってきたことは明らかだった。
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