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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 6-7

 ――まぁ、あれも被害者と言えば、そうなんだろうけどな。  ほぼほぼ出来レースの選挙に出てやろうなどとは、よほどの馬鹿でなければ考えないだろう。  あの後輩に関して言えば、人の良さとなけなしの責任感を刺激された結果なのだろうが。  けれど、どちらにしろ、必要な根回しはするが、必要以上に状況を操作する気はないと明言していたのは、成瀬本人だ。  そうであれば、自分がなにかをする必要はない。たとえ、その後押しをしているのが、風紀や楓寮の一派だとしても。  まばらになり始めた人影をしばし見下ろして、ひとつ溜息を吐く。そうしてから、手に持ったままだった煙草をケースに戻した。 「あ、向原さん」  呼びかけてきた声に反応して振り返ると、書類の束を抱えた皓太が廊下の反対側から近づいてくるところだった。 「……なにしてんだ、おまえ」 「いや、その、各委員会に直接渡してきてほしいって言われて」  おまえがするようなことか、という視線を察したのか、はは、と困ったふうに苦笑して、生徒会室がある方角にちらりと視線を向ける。 「まぁ、体よく追い出されただけなんですけど」 「追い出された?」  見当はついていたものの、話の流れで向原はそう問い返した。周囲に人がいないことを確認するそぶりを見せてから、実は、と皓太が切り出した。

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