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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 6-8

「今、呉宮先輩が来てるんですよね、生徒会室」 「選挙の話か?」 「まぁ、……そうなんですけど。やっぱり、向原さん、知ってたんですね」 「出るかもっていう話はな。おまえも噂くらい聞いてただろ」 「噂は、まぁ、聞いてましたけど」  不承不承というふうに頷いてから、皓太が小さく息を吐いた。 「俺が言うとちょっと失礼かもしれないですけど。本当、あいかわらずいい人というか、義理堅いというか。そういう挨拶だったみたいで」  図らずも、先ほど自分が呆れ半分で考えていたそのままのことを告げてくる。呆れではなく罪悪感がにじんでいたところが大きな差異であったが。 「俺が聞いていいのかどうかわからないし、向こうも、俺がいないほうが話しやすいとも思うし。そういう意味では退出するタイミングをもらえてよかったのかなって」  だから、もう少し時間潰してから戻ろうかなと思って、と皓太が書類を抱え直した。  あと半分回るところが残っていると言うので、それなら、と別れようとしたところで、また呼び止められてしまった。無視するほどのことでもなかったので、問いかける。 「なに」 「あ、……えっと、向原さん、最近、生徒会室来なかったから、ちょっと気になってて」 「急ぎでやることがなかったからな。回ってるだろ、ちゃんと」 「いや、それも、本当にそうなんですけど」  そう言ったところで、言い淀むように皓太が言葉を切った。

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