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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 6-11

 優しい人、守りたい人、いかにも皓太が好みそうな文言で、いかにも成瀬がこの子どもの前で好みそうな態度だった。  先ほどと同じ調子で、「まぁ、そうかもな」と応じる。そのおざなりさを必要以上に気にしたふうでもなく、皓太は続けた。 「だから、半分っていうか、もしかしたら三分の二くらいは本心なんじゃないかなって」 「本心?」 「なんていうか、今、俺たちのことを考えてくれてることは本心だと思うし。一番最初になにをどう考えたのかまではわからないけど。自分のマイナスな気持ちだけで、ここまで続ける人だと思えないから」  どこか淡々とそう言った皓太の視線が、また少し生徒会室のあるほうを向いた。 「そういう意味で、俺が出るって言わなかったら、成瀬さん、どうしてたのかなって、ちょっと気になって」  ――まぁ、あいつに聞いても、耳障りのいいことしか言わないだろうな。  そう承知しているから、自分に聞いてきたのだろう。べつに、誰が出ようが、誰を押そうが、どうでもいいと思っている、というところが正直なところではあったのだが。 「気にしなくていい」 「でも……」 「どう手を回されようが、通る素質のないやつは通らない」  そんなことはないとわかっていたが、向原はそう言い切った。

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