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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 7-1
[7]
「よかったんですか、高藤」
ぱたんと閉まったドアを見やって、どこか困ったように一学年下の後輩が笑ったので、会長の椅子に座ったまま、成瀬も似た笑みを浮かべた。
面と向かってふたりで話すのはひさしぶりだったが、良くも悪くも昔から印象は変わっていない。
それなりに視野が広く、それでいて温和で、自分のつくった学園の基盤を壊さない人物。もうひとつついでに、その次に上がってくるだろう幼馴染みの面倒を見てくれるだけの器のある人物。
だから、三年前、中等部の会長の席を譲る相手を、成瀬は彼に決めた。
「いいよって俺が言うことでもないけど、いると話しづらいでしょ。皓太もいづらかったと思うし」
自分の予想どおりに、それなりに懐いていたと聞き知っている。適当に理由をつけて追いやったのも、半分は皓太のためだ。なんでもない調子でそう応えてから、でも、と話を切り出す。
「ちょっとだけ意外だったな。少し前にね、茅野とも話してたんだよ。選挙。呉宮はどうするんだろうなって」
「なんか、それだけ聞いてると怖いですね」
「どうするのかなって気にしてたんだよ、一応」
怖い話じゃないよ、と断って、ほほえむ。そう、べつに、出てくる前から叩き潰すというような話をしていたわけでも、なんでもない。
「まぁ、俺は、よっぽど頼まれない限り、呉宮はこんな面倒ごとに首は突っ込まないかなって思ってたんだけど」
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