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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 7-9
希望的観測と切り捨てられて、眉を顰める。けれど、言い返すよりも、追撃が来るほうが早かった。
「まぁ、おまえ、万が一うまくいかなくても、べつにいいって思ってそうだから、認める認めない以前の話なのかもしれないけどな」
また壁が揺れる。思い通りに進まないことに対する腹立ちなのだろうか。臆すことなくその瞳を見つめ返したまま、なんなんだろうなと成瀬は考えていた。
自分が苛立つのは、自分の行動に口出しをされる謂れはないと思うからだ。もうひとつあえて言うとすれば、心配されているようで我慢がならないということでもあったが。それにしても。
――そこまで言うようなことか、これが。
と思いもしていた。口にする気はなかったけれど。そういう意味では、向原の言っていることは正しいのだろうとは思う。たしかに、万が一うまくいかなかったとしても、どうでもいいと思ってはいた。
それもひとつの始末のつけ方、というだけのことだ。必要以上に挑発する気も失せて、苦笑いに切り替える。
「向原の言うことを否定する気はないけど。俺がなに言っても信用しないだろうし、その時点でまともな議論にならないと思うんだけどな」
そもそも、議論にする気があったのかどうかも怪しいところだが。その本音は呑み込んだまま、それに、とさらりと続ける。
「否定をする気はないけど、俺は俺のスタンスを変えるつもりはないし、それで、――それは向原もだろ?」
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