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パーフェクト・ワールド・エンド1-4

 勿論、そのつもりだ、と。いとも簡単に茅野は請け負っていたが、寮生委員の方の調整はこれからだろう。揉めるとしたら、水城の在籍している楓寮とだ。面倒事を押し付けて、申し訳なかったと思わなくもないが、第二の性のことで主導権を学内であっても風紀に取られるわけにはいかない。  ――意味があるかどうか怪しい根回しでも、しないよりはマシってだけだな。  考えないわけにはいかなくなった、「何かがあったとき」のために。 「そう言えば」  風紀委員室を出ようとした背を引き留めるように、声がした。 「昨日は、またえらく物々しい雰囲気だったらしいな、櫻寮は」 「おまえには関係ないだろう」  振り向いて応じる前に、生まれた険を拭い去るように茅野が細く息を吐いた。時分とは違う意味で感情をあまり出さない男にしては珍しいが、ストレスが溜まっているだろうことも間違いない。 「冷たいこと言うなよ。茅野。気になるに決まってんじゃねぇか。普段は似非臭いほどに、寛容を掲げているおまえの寮が、あの夜は、特別フロア、全面立ち入り禁止だったんだって?」  一瞬、けれど確かに、空気が凍ったような時間があった。 「中でなにやってたんだ?」 「おまえには、関係のない話だな。寮内のことは、俺の管轄だ」 「そうだな。――が、風紀と寮生委員会、共同で学内の秩序を維持したいって言うなら、情報の共有は必要だと思わないか?」 「何が聞きたい」 「榛名だけじゃない、複数のフェロモンの匂いがしたって言う話を耳に挟んでな」

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