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パーフェクト・ワールド・エンド1-6

 だろうな、とふと思った。本尾にしても、茅野にしても。生きているだけで、世の真理とされるアルファだから。何をしても許される。けれど、アルファでなければそうはいかない。だから何かしらで武装しなければ生きていけないのだ。  正論だったり、理想論だったり、あるいは、偽物のアルファの仮面であったり。 「そもそも、今までがおかしかったと考えるのが普通だろう。オメガとアルファを同じ籠の中で管理していた状況が、な」 「この学校の入学要件に、第二の性の区別はない。当たり前の話だがな」 「そうだ、当たり前の話で、この学園の誰もが当たり前として、全寮制の学校にオメガが紛れ込みに来ているなんて思ってもいなかったはずだ」  僕はオメガです。堂々と水城春弥が宣言したあの瞬間。崩れたものは確かにあった。 「その前提の上でギリギリ成り立ってたんだろ、今までは」  茅野に、ではなく、その言葉が自分に向いていることは間違いがなかった。 「それでも、おまえは今まで通りを突き通すのか?」  すっと、眼を細めて笑う。傲慢なアルファと評される、それで。 「おまえの言うところの、会長様だからな、俺は」  上が崩れたら一巻の終わりだ。そう言う際に、この学園はいる。 「そうだったな、でも」  楽しくて、面白くて仕方がないと言う声が続ける。 「向原は、匙を投げたんだろ? おまえのお守りには」

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