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パーフェクト・ワールド・エンド2-1

[2] 「今日は、休んでも良いんじゃない?」  そんなことを言えば、怒るか拗ねるか。あるいは沈黙を決め込むか。少なくとも、つい一昨日までのこの同室者はそうだったはずだ。  できるだけ、今までと変わらない調子を保って、皓太は話しかけた。相手は、先程俯きがちに寮室に戻ってきたばかりの同室者である。 「……まぁ、べつに、好きにしたら良いけど」  沈黙に耐え切れなくなったのは、皓太の方だった。榛名は仏頂面のまま、自分の机で鞄の中身を入れ直している。鞄は、四谷が教室から持ち帰って来てくれたものだ。  甘い香りは、「今まで通り」の薄さに落ち着いている。香水かな、と思うくらいの。  けれど、もう、そう言った好意的な解釈をしてくれる生徒はいないだろう。 「今日、休んだって、明日には行かなきゃなんねぇだろ」 「そりゃ、そうだけど」  返事があったことにほっとして、皓太は頑なな横顔を隠し見た。多少は青白いが、表情は落ち着いている。 「いつまでここに籠ってられるわけもねぇんだ。だったら、今日、行った方がマシだ」  淡々とした口調だが、取り付く島もない。溜息を押し隠して、皓太は続けた。猛然と拒否されるだろうなと分かっているだけに、気は重かったが。

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