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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ Φ-6
持っている人間、というやつだ。そういう運は、成り上がるために必要なもので、自分はそれを有している。そうしてそれを適切に使用していくことも、できる。
非常階段の扉を開いて、そっと階段を上る。控えめに響くふうな足音を立てて、二階と三階の踊り場へ。ほんのわずかな距離を取って隣に並ぶと、自分にだけ与えられる優しい声音で彼が話しかけてきた。
「ひとり? あいつらは一緒じゃないの?」
「はい。――あ、もちろん、散歩したいなら付き合うよって言ってくれたんですけど」
照れくさそうにはにかんで、目を伏せる。誰のことを指しているのかは、すぐにわかった。同じ寮で、同じクラス。入学した当初から、ずっと自分につき従っているアルファのことだ。
「なんだか、最近は少しひとりでいたいなぁって思うことが増えて。それで、つい。心配していただいて、ありがとうございます」
「ひとりでいたい、か。まぁ、わからなくはないかな」
「長峰先輩もですか?」
意外だというふうに問い返してから、あの、と控えめに提案をする。
「僕でよかったら、お話聞きますよ」
「え?」
「あ、その……、僕が解決できるとかじゃないですけど。僕に話すことで、少しでも先輩が楽になったらなぁって」
上目遣いに見上げて、そっと水城はほほえんだ。乾き始めた初秋の風が、柔らかな栗色の髪をふわりとなびかせていく。
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