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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ Φ-9

 ちら、と牽制の視線を送ったにもかかわらず、追いついて隣に並んだ同級生に、軽く眉をひそめる。  その反応も平然と無視して、いかにも親しげに「春弥」と呼びかけられて、今度こそ水城は声音に不興を乗せた。  先ほど長峰が言っていた、いつどんなときも自分に着いてこようとするクラスメイト。 「ちょっと、今は近づくなって言ったでしょ」 「はい、はい。轟ね」  わかっていると言わんばかりのそれに、もう一度ちらりとした視線を送る。わかっているのなら、相応の動きだけを見せてほしいところだが、そろそろご褒美がほしかったのだろうか。  しかたないなぁ、と水城は口角を上げた。この学園でただひとり「春弥」という呼称を許している時点で、十分すぎるご褒美だと思っているけれど、尽くそうとする相手には、それなりの飴は渡すべきだろう。 「そう、轟くん。今、ちょっとしたゲーム中なんだぁ」 「ゲームねぇ」  妬心だけでなく呆れも混じったそれに、「なに?」と微笑を返す。 「妬いてるの、もしかして」 「いや? 春弥も強欲だよなって」 「強欲?」 「その、狙ったもんは、なにがなんでも落とさないと気が済まないとこ」  知ったふうに言われて、水城は失笑を呑み込んだ。強欲だのなんだの、恵まれた人間がよく言うものだ。彼らの欲と自分の欲は根本的に違う。  自分のこれは、生きていくために必要だったものだ。憤りに似た感情に蓋をして、ほほえむ。

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