874 / 1144

パーフェクト・ワールド・エンドⅢ Φ-10

「だって、諦める理由がないでしょう?」  天使のような純粋無垢な顔をして、高飛車な女王様のような言動をするところが良いのだという、この同級生が気に入りそうな台詞を選んで。  ははっと愉快そうな笑い声が夕暮れの中に響く。同じような笑みを返して、水城はもう少しだけと散策を続けた。 「そういえば、だけど。そのゲームって轟が完全に落ちたら終わりなわけ?」 「え? うーん、そうだな。でも、人間関係って、そもそもがゲームみたいなものじゃない?」  そう答えた半分は、本心だった。 「だって、自分が望む言動を演じる相手を、嫌う人はいないでしょう?」  いつもの調子でにこりと笑ってから、でも、そうだなぁ、と考える。ゲームには分岐点がいくつもあるし、エンディングもひとつとは限らない。  ――でも、まぁ、次の分岐点は、これかなぁ。 「せっかくだから、次のポイントを教えてあげる。ねぇ、今、僕が一番行ってみたい場所って、どこだと思う?」 「行ってみたい場所? どこだよ、言えば連れてってやるけど?」 「駄目。これは轟くん用のセーブポイントなんだから」  くすくすとした笑みでいなして、あのね、とほんの少し声を潜めて囁く。とっておきの秘密を打ち明けるように。 「僕ね。みんなが過ごした中等部に行ってみたいんだぁ」

ともだちにシェアしよう!