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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 8ー5
そんなつもりはなかったのに、慰められてしまった。うん、とぎこちなく頷く。
――でも、たしかに、あそこ、いつ行っても人少ないもんな……。
事実はどうあれ、そういう噂が出ることは、わからなくもない。ぬるくなった珈琲に口をつけて、行人はちらと四谷の表情を窺った。いつかのような追い詰められた雰囲気はない。
自分に吐き出したからと言って、ずっと抱えていた感情をきれいに整理できたわけではないだろうが、それでも少しは楽になったのなら良かったと思う。良かった、というのも、上目線なのかもしれないけれど。
そんなことをつらつらと考えていると、生徒会と言えばさ、とぽつりと四谷が口火を切った。
「同じ寮って言っても、雲の上の存在すぎて副会長と喋ったことって一度もなかったんだけどね」
俺も、ほとんど喋ったことないけど、と思いながら、うん、と行人は相槌を打った。四谷が向原先輩のことを話題にするのは意外だな、とも少し思いながら。
「このあいだ、本当に偶然だったんだけど、助けてもらったんだ」
「え?」
なんだか今日は、予想外な話ばかりが降ってくる。その感情のままに、行人は思いきり意外だという声を出した。
「助けてって、向原先輩が? というか、なんで?」
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