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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 8ー7

 ――向原先輩が、か。  だから、そこまで怖い人でも嫌な人でもないってば、というのは、いささか聞き飽きた感さえある高藤の言で、自分の感情的な部分を脇に置けば、それが正しいのだということは、さすがにわかっている。  その前提があっても「意外だ」と感じたのは、わざと不親切にすることはなくても、わざわざ誰にでも親切にするタイプにはどうしたって思えなかったからだ。  ――そもそも、あの人、「嫌い」とか「嫌悪」とかはなくても、八割の人間「どうでもいい」で括ってそうだし。  興味がないから、マイナスプラス両面ともに手も口も出さないんだろうな、というか。  もうひとつ、そもそもで言っていいのなら、あの人が、気に入っている人間自体が本当に少ないとも思うわけで。そういう意味で言えば、その数少ない気に入られている人間である高藤が、「怖い人でも、嫌な人でもない」と評するのは、ごく自然なことであるのだろう。  ――いや、四谷が助かったのは事実なんだろうから、ぜんぜんいいんだけど。でも、なんか気になるな。  かたちになりきらない「なんか」を抱えたまま、行人は内心で首をひねっていた。

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