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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 8ー8
夏期休暇に入る前、この学園の空気は少しぴりついているように行人には思えていた。
茅野は必要以上に心配しなくていいと言っていたし、そう思いたい気持ちはやまやまだったけれど、休暇中、どこかでずっと気にかかってしまっていた。だから――。
「……成瀬さん、いつもどおりって感じだったから、ほっとしてたんだけどな」
四谷と別れ、寮室の扉を閉めたところで、思わずひとりごちる。当然のことながら基本が多忙の同室者は帰ってきておらず、部屋には行人しかいない。溜息を呑み込んで部屋の明かりをつける。
ひとつ気になることができると、ぐるぐると考えてしまうのは、悪癖なのだろう。うんざりとしつつ、机に鞄を置いて、鍵付きの引き出しにそっと行人は指を這わせた。
実際のところは、どうなのかは知らない。以前よりも圧倒的に喋る機会が減ったからだ。けれど、新学期が始まってからの、この一ヶ月。少ないながらも行人の目には、成瀬も、茅野も、向原も、篠原も、三年生たちはみないつもどおりに見えていた。
これも休暇に入る前に茅野が言っていたとおりで、最近は水城の話を周辺で聞くこともなくなっていたし、高藤はやたらと生徒会に入り浸っているようで忙しそうにはしていたけれど、選挙前の時期であるからしかたないと思っていた。
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