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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 8ー9
「本当、あいつ、そういうこと言わないよな」
無論、高藤のことである。それだけ自分が頼りにならないということなのだろうとわかっていても、腹は立つ。
先輩である成瀬や茅野であれば、誤魔化されたとしてもしかたないと思うし、事情があるのだろうと慮ることもできる。だが、しかし。なぜそこの枠組みに、同じ年のおまえまでさらりとあたりまえの顔で入ろうとするのか、ということだ。
――立候補の受付期間ももう終わるし、来週には選挙の活動期間が始まるのにな。
それが終わって、十月末の立会演説会を経て投票結果が出れば、生徒会は新体制に変わる。誰を生徒会役員に登用するかも、新会長が決めることになる。そこまで考えたところで、行人はひとつの可能性に気がついた。あの、高藤の、「できれば生徒会なんてものに関わらないほうがいいと思うんだけど」と言わんばかりだった微妙な顔。
……もしかして、成瀬さんが誘ってくれてる今の期間逃したら、俺がするしたい以前に、生徒会に参加なんてできなくなるんじゃ。
高藤や四谷にどう言われようとも、自分が場違いであることは自分が一番わかっているのだ。でも。扉が開いた音で、行人ははっと顔を上げた。
「……おかえり」
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