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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 8ー11
先ほど自分が示した「これ以上突っ込まれたくない」を尊重してもらっている以上、自分もここで引くべきなのだろうが。そうわかっていながらも、なんとなく引けなくて、行人は質問を続けた。
「呉宮先輩も出るって話聞いたけど」
「あぁ、……まぁ」
「まぁって、本当なんだ?」
高藤からはなにも聞いていなかったけれど、その話を四谷に聞いたときから気になっていたのだ。
その先輩に嫌な印象はいっさいないものの、行人自身はほとんど交流がなかったので、よくは知らない。もちろん、中等部の二年だったときに生徒会長をしていた人なので、そういう意味で知ってはいるけれど。
その次に生徒会長をしている高藤は、交流もあっただろうし、よくよく知っている相手だろう。そんな人と争う立場になるのは嫌なんじゃないかなと明らかに気を揉んでいた。
……だから、俺も、ちょっとは気にしとけって言いたかったんだろうしな、あれ。
べつに大丈夫、問題ないだろうで行人なら流してしまいそうなことを、四谷は細やかに気に留めている。昔だったら、鬱陶しいと思っていただろうことだ。でも、今は違う。本当に好きだから気になってしまうのだろうなと理解できてしまう。
「本当、本当。日が来たら公示もされるし。でも、あいかわらずいい人というか、義理堅いというか、成瀬さんのところにも直接出るって言いに来てたよ」
「あ、……そうなんだ」
「そう、そう。昨日かな。べつに、成瀬さんも、あいかわらずしれっとしてたし。でも……」
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