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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 8ー12
「でも?」
中途半端なところで言葉を切られて、行人は問い返した。返ってきた沈黙に、視線を向ける。
「なんだよ?」
続けてそう問えば、高藤が、いや、とまたなんとも言えない顔をする。いっそのこと吐けばいいのにと言いたくなるくらいには、最近は誤魔化し方が雑だ。
余裕がないということなのかもしれないが。
「本当、べつに。たいしたことじゃ。――いや、ちょっと、もうすぐ選挙活動も解禁になるから、忙しくて」
行人のじっとりとした視線が気になったらしく、いかにもとってつけたことを言う。それは、まぁ、忙しいとは思うけれど。へぇという気分で、忙しいんだな、と行人は言葉尻を繰り返した。
「でも、それも、時期が時期だからしかたないっていうレベルだから」
「でも、忙しいんだろ。生徒会、人員少ないもんな」
「いや、まぁ、それは、まぁ、そうなんだけど。あの人ら、人の好き嫌い激しいから」
「じゃあ、手伝おうか、俺」
「……え?」
なに言ってんだと言わんばかりの間を無視して、宣言する。
「手伝う」
「いや、でも」
「おまえがなんて言っても、今の会長の成瀬さんが、俺に声かけてくれたわけだから。だから、参加する権利はあるし」
「いや、あの、権利って」
呆れたように溜息を吐いた高藤が、ぐしゃと前髪を掻き交ぜる。隙間から覗く瞳はどこまでももの言いたげだったが、行人はひるまなかった。少ししてから、またひとつ溜息が響く。
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