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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 9ー1
[9]
大嫌いだ、と。ずっとそう思おうとしていた。自分にはないものすべてを持っている男だったから。
「じゃあ、榛名連れてくけど、よかったんだよな? 皓太は――、あぁ、はい、行かないのな、了解」
微妙な顔で首を横に振った皓太に苦笑を返した篠原が、「じゃあ行くか」と緊張気味の様子の行人に声をかけている。書類の分類されている箱の前で、篠原の説明を聞く行人の横顔は真剣で、それがどうにもほほえましい。
いつもの自席からそっと様子を窺っていると、篠原が振り返った。
「委員会回り行ってくるわ。榛名の顔見せがてらだから、ちょっと時間かかると思うけど」
「急がなくていいよ。皓太はこっちに残ってくれるらしいから」
神妙に書類を抱えている行人に笑みを向けると、ほっとしたようにその表情がゆるむ。肩に力が入り過ぎている気もするけれど、はじめての挑戦だと思えば、そんなものなのかもしれない。
ぺこりと頭を下げた行人が篠原について出て行くのを見送って、生徒会室に残ったもうひとりに水を向ける。
「よかったのか? 着いて行かなくて」
「なんで決裁返しに行くだけの篠原さんに、ふたりも着いて行かないといけないの」
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