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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 9ー6

「どっちでもいいよ、べつに」  いまさらだと言えば、それもそうかとあっさりと納得する。本当に、いまさらだ。近寄ってきた茅野に、「なに?」と軽く吸い差しを持ち上げる。 「吸うの?」 「おまえたちと一緒にするな。俺は吸わん」  それとここは喫煙所じゃないんだぞ、と続いた苦言に笑って、短くなってきたそれを銜えた。 「それにしても珍しいな。あいかわらず向原はばかすか吸っているが……」  とまで言ったところで、茅野が言葉を止めた。なにを考えているのかわかって、うんざりと否定する。 「貰ってばっかりだったから、これに慣れてるってだけ」 「……」 「本当、それだけ」  吸わないくせに、匂いで誰と同じだのなんだのと銘柄を当てなくてもいいだろう。  吸う気をなくして、小さく息を吐く。こめかみに指をやると、茅野が問いかけてきた。 「なんだ、また頭でも痛むのか」 「痛いよ。ふつうに激痛」   指の腹で押さえたまま、そのままを成瀬は告げた。これもいまさらなんでもない顔をしたところで、意味のないことだ。  量を増やしたところで、一時的に効いている気がするだけだと言っていた先生の忠告はあたりまえに正しかったのだと痛感してはいる。  ――休みのあいだは、まだ大丈夫だったんだけどな。

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