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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 9ー7
「どちらかといわなくても、悪化させてるんじゃないのか。それは」
「いいんだよ、紛れたら」
「匂いが? それとも、罪悪感か?」
「そういうわけでもないけど。息抜き」
苦笑で応じて、携帯灰皿に吸殻を入れ込んだ。
「もう、選挙活動も始まるから。――そういや、出るかなどうかなって言ってたけど、出るって、呉宮。ちょっと悪いことしたな」
「悪いこと、か」
「うん。まぁ、自分をすっ飛ばされたら、いい気はしないだろ」
それはそうだな、と頷いたあとに、だが、まぁ、しかたないだろう、と自身が皓太に諭したことと同じことを茅野が言う。
だから、成瀬もまた、そうなんだけどな、とだけ返した。なんだかんだと情の深いところのある幼馴染みと違い、気に病んでいるというほどのことではない。ただの世間話だ。
「こういうことを聞くのは、どうかと思うが」
「ん?」
「効かないだなんだと言っていたのは、まだ解決し切ってない話なのか?」
そう簡単に解決するかよ、とも、そもそも、薬の問題じゃないで切り捨てられてるんだよ、とも言えるわけがない。
しかたなく、成瀬は事実の一端を口にした。
「病院は行ってる。なにも手を打たないでいるほど、自分を信用はしてないし」
あたりまえのことだというふうに苦笑する。この不調の原因が、自分のメンタルだとは認めがたかった。
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