894 / 1144

パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 9ー7

「どちらかといわなくても、悪化させてるんじゃないのか。それは」 「いいんだよ、紛れたら」 「匂いが? それとも、罪悪感か?」 「そういうわけでもないけど。息抜き」  苦笑で応じて、携帯灰皿に吸殻を入れ込んだ。 「もう、選挙活動も始まるから。――そういや、出るかなどうかなって言ってたけど、出るって、呉宮。ちょっと悪いことしたな」 「悪いこと、か」 「うん。まぁ、自分をすっ飛ばされたら、いい気はしないだろ」  それはそうだな、と頷いたあとに、だが、まぁ、しかたないだろう、と自身が皓太に諭したことと同じことを茅野が言う。  だから、成瀬もまた、そうなんだけどな、とだけ返した。なんだかんだと情の深いところのある幼馴染みと違い、気に病んでいるというほどのことではない。ただの世間話だ。 「こういうことを聞くのは、どうかと思うが」 「ん?」 「効かないだなんだと言っていたのは、まだ解決し切ってない話なのか?」  そう簡単に解決するかよ、とも、そもそも、薬の問題じゃないで切り捨てられてるんだよ、とも言えるわけがない。  しかたなく、成瀬は事実の一端を口にした。 「病院は行ってる。なにも手を打たないでいるほど、自分を信用はしてないし」  あたりまえのことだというふうに苦笑する。この不調の原因が、自分のメンタルだとは認めがたかった。

ともだちにシェアしよう!