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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 10ー2
「疲れたか?」
「あ、いえ!」
ごく自然と労わられて、行人は慌てて顔を上げた。知らないあいだに、思いきりうつむいてしまっていたらしい。
それは、まぁ、隣でとぼとぼと歩いていたら、そういう声かけにもなるだろう。
「大丈夫です。その、……まだ、わからないことばっかりですけど、がんばります」
「がんばるはいいけど、ほどほどにな」
「でも」
「新体制に変わるときまでに最低限慣れたらいいだろ」
さらりと飛び出した「新体制」という言葉に、行人はどうにか張り付けたばかりの愛想笑いを固まらせた。
「ちょうど良いタイミングだったと思うけどな。成瀬が言い出したときは、あいつまた好き勝手してんなと思ってたけど、今なら俺が面倒見れるし、新体制になるまでには慣れるだろうし」
とまで言ったところで、無反応に黙りこくっていることに気づいたらしい。ちらりとこちらを見やった篠原が、なんとも言えない顔をした。
「もしかして、おまえ、皓太が入ることに良い顔しないから、成瀬がいるあいだにって入ってきたわけ?」
「……はい」
いつだったか高藤が言っていたような気がするが、本当に、やたらと勘が良いな、と思いながら、頷く。どうせ、高藤にでも確認を取られたら、すぐにばれることだ。
――いや、まぁ、そんなこと言い出したら、ここの三年生、どの人も良すぎるくらい察しが良い気はするけど。
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