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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 10ー4
呆れていた雰囲気を、篠原が引っ込める。その調子でじっと行人を見つめてから、「まぁ、べつに」と淡々と口を開いた。
「おかしいとまでは思わねぇよ」
「そう、ですか」
「正直、うちの学園に入れるだけの頭があるやつだったら、補佐くらいは誰でもできる。そういう意味で、おかしいとは思わない」
「……」
「でも、それって、逆に言えば、誰でもできるってことだろ。だから、その前提の上でおまえが選ばれた理由ってなると、成瀬の好みだとしか言えないわな」
願っていた以上にはっきりとした答えに、見上げたまま、行人は瞳を瞬かせた。
「っていうのが、俺の本音」
「……そうですよね」
自嘲しないように気をつけて、そう頷く。これも本当にそのとおりだと思ったからだ。
けれど、同時に、最低限できるだろうと判断してもらっているのなら、食らいついていかないといけないと改めて思う。
せめて、「誰にでもできること」を「こいつはできない」と思われないようにしないといけない。そうでなければ、いる意味が本当になくなってしまう。だから、行人は、もう一度頷いた。
「ですよね。俺もそう思います」
「まぁ、ほかの補佐のやつらも、成瀬の好みっていう意味では、成瀬の好みだし。トップとの相性を人選の理由にすることはおかしくはないわけで。そういう意味で正当だとは思うけどな」
フォローするような台詞のあとで、だから、とおざなりに篠原が言い足した。
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