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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 10ー6

 隠せなかった溜息に、篠原が呆れ顔で駄目押した。 「言い訳なんてみっともないからしません、行動だけで判断してください、で、とんでもないことになってる見本がすぐそばにいるだろうが。もっとまともなやつ見習えよ。冗談じゃなくて、そこは本当に」  どうとも言えず曖昧に笑った行人を一瞥して、篠原が歩みを再開させる。慌てて行人もそのあとを追った。  ――生徒会に入ったら、俺が嫌な思いするんじゃないか、みたいなこと高藤は言ってたけど。高藤本人はどうなんだろうな。  そういった懸念を脇に置いたとして、自分が生徒会のメンバーになったら、少しでもうれしいのか、ほっとするのか。それとも、やはり嫌なのか。 「あ、あと、榛名」 「はい」 「向原だけど」  さらりと飛び出した苗字に、半ば反射でドキリとしてしまった。その反応には気がつかないことにしたらしい篠原が、こちらを見るでもなく続ける。 「おまえが怖がるのはある程度しかたないとしても、あんま必要以上に怖がってやるなよ。同じ空間にいるやつがガチガチにビビってたら、俺が気になる」 「あ、……はい」 「あと純粋に感じが悪い。そういうこと向原は言わないけどな、一応、先輩だぞ、あいつも」  それもまた、はい、としか言いようがない論法だったし、自分でもわかっている。再びこぼれそうになった溜息を行人はぐっと呑み込んだ。

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