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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 10ー7

 本当に、いまさらではあるけれど、わかっているだけで、どうにもできていないことが自分には多すぎるのだと思う。  なんだか、十分にも満たない問答で、改めて思い知った気分だった。  ――いや、篠原先輩が言ってることは、本当に、ぜんぶ正しいと思うんだけど。 「まぁ、最近、またあんまり顔出さなくなってるけどな。この分だと、選挙終わるまで来ねぇかもな」 「え……、それ、いいんですか」  自身の覚える好き嫌い、得意不得意はさておいても、副会長ではないのだろうか。 「よくはねぇけど。俺らがいないタイミングで最低限はやってるから、文句も言いづらいというか。それに、俺が言っても聞かねぇし」  半分諦めたふうにそう言った篠原が、まぁ、と小さく溜息を零した。 「会長がなにも言わないからな」 「……」 「いいってことなんだろ」  なにも言えなくて、行人はかすかに目を伏せた。篠原も、それ以上は言わなかった。  向原という先輩のことを、行人はほとんど知らない。もちろん、有名な人だから、表面的な情報であれば知っている。高藤や、あるいは成瀬から漏れ聞く話で、自分が思うほど怖い人でも、理不尽な人でもないのだろうともわかってはいる。  知りたいのなら、自分の目でしっかりと見たほうがいい、と。高藤に助言されたこともあるし、一利あるとも思ったけれど、でも、べつに、怖い人のままでも構わなかったのだ。自分の好きな人たちを大切にしてくれるのなら、それで。

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