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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 10ー8

 ――もう、元に戻ったんだって思ってたのにな。  生徒会に戻ったことが答えだと勝手に安心していたのに。言葉になりきらない感情を抱えたまま、行人は、篠原に続いて生徒会室の扉をくぐった。 * 「なんか、榛名。めちゃくちゃ顔死んでるけど、大丈夫?」 「……うん」  大丈夫、と口の中でもごもごと呟いて、行人は伏せっていた顔を上げた。前の席に腰かけた四谷が、「やっぱり大変なんだ、生徒会」と興味半分心配半分といったふうに呟く。  昼休みのほとんどを机に突っ伏していたのが気になって、授業開始前に声をかけにきてくれたらしい。  はは、と笑って、小さく欠伸をひとつしたところで、行人はぐっと肩を伸ばした。 「大変っていうか、覚えることが多くて、純粋にそっちで頭いっぱい。俺、要領悪いし」 「あぁ、まぁ、それは、ねぇ」  いっさい否定することなく笑った四谷が、言ってから「しまった」と思ったのか、取ってつけたような励ましを寄こした。 「それは、まぁ、高藤に比べたらしかたないんじゃない?」 「……そうだな」  それは、まぁ、頭のつくりも、そもそもの経験値も違うだろうよ、としか言いようがない。

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