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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 10ー10

「やってるっていうか、逆っていうか」 「逆?」  問い重ねた行人に、周囲を気にするように四谷が声のボリュームをさらに落とす。 「実際、なに考えるのかは俺は知らないけど、新学期入ってから、やけに大人しいのは事実らしいし。楓寮は、ほら、いろいろあったからさ、前の寮長のこととか、さすがに責任感じてるんじゃないのかな、みたいな」 「……」 「ことを言ってる人は、それなりにはいるかも。まぁ、俺は、そんなことに責任感じる性格はしてないと思うんだけどねぇ。どっちかって言うと、なんでだって逆切れしてるほうが想像しやすいっていうか」  たしかに、行人のイメージするところの水城もそんな感じだ。苦笑ひとつで頷く。 「とりあえず、よくわかんないけど、ひとり行動が増えたことは事実らしくて。前はさ、けっこうがっちり親衛隊みたいなアルファが周囲を固めてたから、近づこうにも近づけなかったじゃない? でも、今なら簡単に近づけるって思ってる連中もいるってこと」  近づける、と思わず行人は語尾を繰り返した。言いたいことは、わかる。でも――。  ……なんか、やだな。それ。  これも、一学期の話だ。あれほどオメガであるということを主張して、水城はなにかあったらどうする気なのだろう、と高藤に聞いてみたことがある。

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