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パーフェクト・ワールド・エンド2-6
――まぁ、ここまで来る間も散々に言われてたけど。
ちらりと背後に視線を送れば、仏頂面を通り越して、全くの無表情の榛名の顔があった。元々がどこか女性的に小づくりに整っているので、人形のようだ。
「高藤。榛名もおはよう」
漂っていた緊張を破って、皓太たちの方に近づいてきたのは四谷だった。多少ぎこちなかったけれど浮かべられていた笑顔にほっとして、皓太は中に押し出すように榛名の背を押した。
「昨日はごめんな。榛名の鞄、持って帰ってきてくれて助かった」
「ううん、ぜんぜん」
「今日もまだ調子良くないみたいだから。悪いけど、一緒にいてやってくれる?」
微かに微笑んだ皓太に、四谷が戸惑い気味に榛名を見て、――そして頷いた。得心したように。
「うん。分かった。そう言うこと」
「そう、俺のつがい」
会話に聞き耳を立てている周囲に届くように、皓太は言い切った。榛名の表情は変わらない。不服そうな顔をしないだけマシだと思うことにして、続ける。
「だから、よろしくね」
本当に一瞬だったが、榛名がもの言いたげな瞳を向けた。気が付いたが、だからと言って、今更どうともできない。そう言う取り決めだったはずだ。言い聞かせるように思ったのは、榛名に対して、と言うよりかは自分へ、だったのかもしれない。
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