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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 11ー7
めったに生徒の寄り付かない屋上なんて、来たくもないところにやってきたのも、篠原が、「向原なら、たぶんそこだと思うけど」と言ったから、本当にしかたなくだ。
「そのわりに、するなとは言わないんだな」
本当に一瞬だけこちらを一瞥して、呆れたように向原が笑う。その視線は、またすぐに眼下の景色へと戻って行った。
篠原は、「あいつ、昔から、なんか高いところ好きだから」と向原が屋上にいる理由を説明していたが、もっと単純に煙草を吸いたいからではないだろうか。
吸いさしから流れてくる煙に、成瀬は軽く目を眇めた。煙草に手を出しているのは、この同級生だけではないが、なにが良いのかよくわからない。
――いい学校だな、本当に。
成績と表の顔さえ維持していれば、裏の悪行には、大人はなにも口を出さない。それが、この学園の暗黙のルールだ。
フェンスに背を預けて、弁明する気の欠片もなさそうな横顔に、改めて視線を向ける。
予想どおりと言って差し支えのない反応ではあった。
口数が多い少ないという問題ではなく、向原は、自分に益があると判断したものか、興味が惹かれたものでなければ、極端なほど反応を示さない。
そんなふうだからまともに会話をする相手も限られていて、いいところ、篠原か本尾くらいしか思い浮かばない。そのふたりにしても、話しかけられたから受け答えをしている、というふうでしかないのだが。
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