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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 12ー3

 だから、そういうことなんだよなぁ、と改めて気がついた。すべての生徒が喜ぶものなどないのだろうけれど、その前提の上で、覚悟を決めて選び続けなければならないということだ。  ――篠原先輩は、成瀬さんの勝手っていう言い方よくするけど、それもそういうことなんだよな、きっと。  誰になにを言われようとも、トップに立つあの人が、あの人自身の責任で選び続けているということ。だから、喜ばれることもあれば、同じだけ敵をつくることもある。  その覚悟が、自分にはあるのかということが大切で、高藤の目にはきっとあるように映っていないということ。  ……たしかに、ちゃんと話さないといけないんだろうな。  そうでないと、自分の分の重荷も高藤に背負わせてしまうことになる。その可能性に、行人はようやく気がつくことができた。  高藤のために手伝いたいというのは、口当たりは良いけれど、理由としては決して良くはない。 「あ、榛名ちゃん。今日も遅かったんだね。生徒会おつかれさま」 「荻原。あ、四谷も」  一年生のフロアの談話室の前で声をかけられて、行人は立ち止まった。茅野がここで雷を落としたとかで閑散としていた時期もあったが、夏休みが明けてからは、ぽつぽつと寮生たちがまた集まるようになった。  あの一時期のようなギスギスとした雰囲気は鳴りを潜めているので、行人個人としては安心している。  今日は、荻原と四谷のふたりだけのようだけれど。

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