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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 12ー6

「ただいま」 「おかえり」  扉を開けると、机で勉強をしていた高藤が顔を上げないまま、続けて話しかけてきた。 「ちゃんと話せた? 成瀬さんになんか相談したかったんだろ?」 「まずはおまえと話したらって言われた」 「え、なにそれ、気持ち悪」  正直に答えたのに、予想外の反応をされてしまって、鞄の片づけそのままに、隣の机を睨む。  とっかかりになればという下心もあったはあったけれど、その返事はどういうことだ。 「あぁ、いや、その、……なんか、こう、すごいまともだったから」 「成瀬さんはすごいまともだろ」 「いや、…………うん、まぁ、そうだね」  諦めた顔で苦笑した高藤が、そこでペン置いた。椅子ごと身体がこちらのほうを向く。わかりやすい話を聞くという姿勢。 「俺と話したらって、なにを相談しようと思ってたの?」 「えっと……」  どこから話すべきか悩みつつ、行人は椅子を引いた。言うべきことがありすぎて、正直なところいっぱいいっぱいではある。  本当に言葉にすることは苦手だし、相談することはもっと苦手なのだ。  でも、そんな自分を急かすようなことをするやつではないと知っている。  だから、行人はゆっくりと話し始めた。 「そもそもでいうと、成瀬さんに相談したかったのは、水城のことだったんだけど」 「水城? なに、またなにか言われたりした?」  最近おとなしかったのに、と続いたひとりごちる調子のそれに、慌てて頭を振る。  やたらと険がある気がしたからだ。こいつ、本当に水城のこと嫌いなんだな。まぁ、わからなくはないけど。

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