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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 12ー7
「じゃなくて。その、さっき、高藤が言ってたとおりで、大人しいから」
「あぁ、そっち」
「そう、そっち。それで、なんか変な噂も聞いたから」
「あぁ、まぁ、あるはあるみたいだね」
知ってはいるけど、興味はないとばかりの反応だったが、めげずに行人は続けた。そういえば、前にも似たような話を持ち出したときも、「変なところでお人好しだよね」というありがたくもない評価をもらっただけだったかもしれない。
「それで、ちょっと気になったから、成瀬さんに話してみたんだけど。その噂が本当なら、生徒会として、風紀と寮生委員会と調整はするけど、高藤は水城とクラスも一緒なんだし、まずそっちに聞いてみたらって」
「なるほど」
いったい自分はどんな顔をしていたのか。話を聞いた高藤は、少しおかしそうに苦笑をこぼした。
「それで、そんな顔してるんだ。さっきも榛名もすごいまともって言ってたけど、まともな会長の意見だと思うよ? まともすぎてどうしたとはちょっと思ったけど」
あの人、基本的に身内びいきだから、と言ってから、まぁ、でも、と言葉を続ける。
「俺でも同じこと言うかな。そもそもの大前提として、水城がなにも考えなしにそんな状態になるわけがないとは思ってるけど、まぁ、もし万が一目の前でなにかあったら助けるし、情報として共有するし精査もするけど、個人的な感情としての心配はないな」
「……でも」
「だから、べつに、榛名のこと突き放したとかではないと思うよ。大きく心配するようなことではないから、俺と話して感情のほうを落ち着かせたらいいって思ったんじゃない?」
いや、違う。話の本意はそこじゃない。そう思ったものの、突き放されたのだろうかと不安に感じていた部分がないとは言えなかったので、行人は押し黙った。
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