927 / 1144
パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 12ー8
「それに、成瀬さんが知らなかったわけがないと思うし」
「知らないって、水城の噂のことだよな」
「そう、そう。手を打つ気があるなら打ってるだろうし、打たないなら、そのほうがいいって判断したっていうだけだと思うよ。――どう? ちょっとは安心した?」
「安心っていうか」
自分がしているのは、余計な心配でしかないのかという気分は増したけれど。
――まぁ、でも、同じクラスで毎日見てる高藤がこう言うんだから、本当に気にするレベルの話ではないのかもな。
目に余るできごとになっていたら、さすがに無視はしないだろうし。そういう人間だと信用している。
「もうひとつ、聞いてみたらって言われてたことがあるんだけど」
「なに?」
「おまえが、選挙のことで悩んでるみたいだから、よかったら話聞いてやってって」
なんか、悩んでる? なんて、聞いたところで、べつに、なにも、と誤魔化されてしまったら、それ以上をうまく突っ込んで聞き出すことができる自信は、はっきり言ってまったくない。
そういったわけだったので、行人は恥も外聞も捨てて、虎の威を借りだ。年上の幼馴染みが判断した「悩んでるみたい」を勘違いと切り捨てはしないだろうと踏んだからだ。
なんでも聞いてくれていいけどというふうだった余裕の表情が、どんどんと嫌そうになっていく。そうして、その顔のまま、ぼそりと高藤が呟いた。
ともだちにシェアしよう!

