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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 12ー8

「それに、成瀬さんが知らなかったわけがないと思うし」 「知らないって、水城の噂のことだよな」 「そう、そう。手を打つ気があるなら打ってるだろうし、打たないなら、そのほうがいいって判断したっていうだけだと思うよ。――どう? ちょっとは安心した?」 「安心っていうか」  自分がしているのは、余計な心配でしかないのかという気分は増したけれど。  ――まぁ、でも、同じクラスで毎日見てる高藤がこう言うんだから、本当に気にするレベルの話ではないのかもな。  目に余るできごとになっていたら、さすがに無視はしないだろうし。そういう人間だと信用している。 「もうひとつ、聞いてみたらって言われてたことがあるんだけど」 「なに?」 「おまえが、選挙のことで悩んでるみたいだから、よかったら話聞いてやってって」  なんか、悩んでる? なんて、聞いたところで、べつに、なにも、と誤魔化されてしまったら、それ以上をうまく突っ込んで聞き出すことができる自信は、はっきり言ってまったくない。  そういったわけだったので、行人は恥も外聞も捨てて、虎の威を借りだ。年上の幼馴染みが判断した「悩んでるみたい」を勘違いと切り捨てはしないだろうと踏んだからだ。  なんでも聞いてくれていいけどというふうだった余裕の表情が、どんどんと嫌そうになっていく。そうして、その顔のまま、ぼそりと高藤が呟いた。

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