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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 13ー9

 それはそうだろうと理屈ではわかる。自分も、ほかの誰かが似たようなことを言っていたら、そう諭すだろうとわかる。でも、自分には当てはめられないんだよ。虚勢でもなんでもなく、大丈夫だから。  そう返す代わりに、視線を外して、おざなりに告げる。 「それこそ、向原に言われたくないんだけど。じゃあ、おまえもやめろよ。その、手っ取り早いでわざと怪我すんの」 「気になんの?」 「言っただろ。さすがに目の前で血の匂いがしたら気になる」  これも、本当にそれだけのつもりだった、ことだった。その返事に、向原がまた少し笑った。   「おまえが気になるなら、やめてやってもいいけど」 「けど、なに」  そんな妥協を見せたことは、ほとんど今までないくせに。内心でそう呆れつつ、問い返す。  なんで、こんなことを話しているんだろう、とも思いながら。いまさらだ。放っておいたところで、なにも問題はないとわかっているのに。  ――でも、まぁ、放っておけなかった時点で同じなんだろうな、俺も。 「簡単に触らせんな」 「……は?」  視線が上がる。なにを考えているのかはわからなくて、けれど、真面目に言っていることだけはわかってしまった。  どうしようもなくて、論点をずらして笑う。 「触らせんなって、茅野なんだけど」 「誰でも」  誤魔化したかったのに、向原は誤魔化されてはくれなかった。 「一緒だろ。触らせんな」

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