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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 14ー1
[14]
「ちょっと前までぐったりしてたのに、なんか元気になったね、榛名」
「え?」
「元気っていうか、生き生きしてるっていうか。今日も、このあと生徒会行くんでしょ? べつにいいけど、見てるだけで、なんか胸やけ」
嫌味半分を通り越して嫌味八割という感じのそれに、昼休み中に終わらせたくて必死になっていた課題から行人は顔を上げた。
行人の机に頬杖をついていた四谷が、はぁ、とひとつ溜息を吐く。
「だから、いいって言ってるじゃん、べつに。いいよ、わざわざ手なんて止めてくれなくて。どうぞ、がんばって」
「あ、……いや、べつに、昼休みに行くつもりはないんだけど」
「あっそ。でも、放課後は行くんでしょ」
「いや、それは、まぁ」
行くけれども。機嫌の悪そうな態度を持て余して、行人はもごもごと口の中で呟いた。そうして、ちらりと四谷の様子を窺う。
どこがどうとは言わないが、とりあえず機嫌が悪そうなことに間違いはない。
……なんか、昔の四谷って感じだな。
この、情緒不安定そうなトゲトゲ具合いが。
昔と比べると、四谷との距離はぐっと縮まったと思うものの、こういった場合にどう対応すべきなのかは、まだよくわからない。
持て余したまま、ちらりと隣にいた岡に視線を向ける。自分と違って、中等部にいたころから、ずっと四谷と親しくしている相手だ。
きっとどうにかしてくれるだろう、との期待を込めて送った視線に、岡がかすかな苦笑いを浮かべる。
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