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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 14ー3

 ――そういや、荻原も言ってたもんな。気にしてあげてって。  正直、あまり気にすることもできていなかったのだが。でも、まぁ、同じお節介を焼くにしても、自分より岡のほうが適任だろう。  そう自分を納得させていると、四谷を追いかけていった岡の席に座った高藤が、内緒話の要領で話しかけてきた。 「どうしたの、あれ」 「近い、近い、近い!」 「え? そう?」  ごめん、と気を悪くしたふうでもなく素直に謝られ、ちくりと罪悪感が痛む。  四谷に対する配慮で声をひそめだだけだとわかるから、余計に。が、わかっていても、近いものは近い。  半ば条件反射で、行人は眉間に皺を刻んだ。  ……いや、本当に、他意はないってわかってはいるんだけど。  生徒会に入って知ったことはいくつもあるが、そのうちのひとつが、高藤は案外と人の距離が近い、ということだった。  成瀬は幼馴染みだからそういうもののなのかと納得していたが、そんなことはなかった。篠原ともふつうに近いし、なんなら向原ともごく自然と距離が近い。  つまるところ、親しいと認識した相手に対するパーソナルスペースが狭いのだ。  何年一緒に生活していて気づかなかったのだと自分でも思うが、そうであったらしい。たぶん、同学年にそこまで親しいやついなかったんだろうな、こいつも。

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