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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 14ー5

「まぁ、でも、それは、いいか。強制するようなもんでもないし。それで、これなんだけど――」  高藤が持ってきた紙面を覗き込みながら、行人は、うん、と頷いた。  あの夜。行人は、ほぼはじめて、高藤としっかりと向き合って話をした。そうしてその話し合いは、いい意味で、少し高藤を身近にした。  ――でも、いまさらだけど、あたりまえなんだよな。  アルファだし、なんでもできるやつだし、実際に本当になんでもできるけど、それでも、同い年の同級生なんだよなぁと改めて認識したというか。  ――まぁ、何回か、前にも思い直したことあるはずなんだけど。なんかすぐに抜けるんだよな。  成瀬たち三年生に対するように「すごい」と盲目的に思っているわけではないつもりなのに、そう思うと少し不思議だ。  ちゃんと持続させないとな、と自分自身に言い聞かせながら放課後の校舎内をひとりで歩いていた行人だったが、ふと立ち止まった。 「あれって……」  窓の外に見えた人影に、思わず声が漏れる。 「水城と、……誰だっけ」  三階から見下ろしているかたちなので、顔もおぼろげであれば見えるし、同じ学年の誰かだったことはわかるのだが、名前がわからない。  だから、おまえは、他人に興味がなさすぎると言われること請け合いで、多少の申し訳なさもあるのだが、たぶん、そこまで目立つタイプの同級生ではないのだろう。

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