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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 14ー7

「なら、さっさと済ませて生徒会室に戻るか」 「え?」 「せっかくだからな、手伝おう。荷物も増えるだろう」 「えっと、でも……」 「気にするな」  それに、手分けしてやったほうが楽だろう、とさらりと請け負って、茅野が歩き出す。当初の目的地だった印刷室のほうに向かっているとわかって、行人もそのあとを追う。 「あの、すみません。ありがとうございます」  生徒会室に顔を出したタイミングで、人出がなかったらしく篠岡に頼まれたのだが、印刷室を使うことに慣れていないので、茅野の申し出は正直なところ、ありがたかったのだ。 「いいと言っただろう。それで? なにを見てたんだ、おまえは」 「あ、いや、水城が」 「水城? なんだ、またひとりでふらふらとしてるのか、あいつは」 「いえ、誰かと、たぶん同級生と一緒だったみたいなんですけど、顔は見えたんですけど、名前がわからなくて、それで、誰だったっけって気になっちゃって」 「榛名」  そこではじめて茅野の声に呆れた色が乗った。 「おまえ、さすがに同級生の顔と名前くらい一致させたらどうなんだ。顔はわかったということは、編入組でもないんだろう」 「いや、……ですね」  自分でも思っていたことだったので、苦笑いにしかならない。学年が違っても、茅野であれば、しっかり名前を言い当てる気がするので、なおさらだ。

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