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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 14ー10
それなりに気安い関係の同級生なのかもしれない。ほらとばかりに印刷機のスイッチを茅野が入れたので、慌てて原稿を持って隣に並ぶ。
「なに急に人の個人情報言いふらしてんだ、おまえ」
「そこまで個人情報のつもりはなかったんだが。なら、もう少し深掘りしてみるか、せっかくだしな」
三年生の話に入れるわけもなく、肩身の狭い気分のまま、原稿をセットして、コピーを開始する。
もはや、早く終わらせてこの場を辞したい一心である。
「榛名。この赤崎のほうは、長いあいだ柏木に気があってな。おかげで成瀬とすこぶる相性が悪いんだ」
「おい、ふざけんな。何年前の話だよ」
「そうか? 高等部に上がってからも、一度言い寄っていただろう。その直後に、わざわざ首を突っ込んだ成瀬に、腹の立つ釘の刺し方をされていたから、てっきり」
「……おまえ、本当にもう黙れよ」
聞いているだけで胃が痛いし、なんだかちょっと向こうが気の毒になってきてしまった。
愛想笑いを浮かべることもできず、うつむいたまま、印刷機に早く刷り終われと念じるしかない。
気安い関係どころか、あまり仲の良くない相手だったのかもしれない。変わらない飄々とした調子で笑った茅野が、排出されたプリントの束を仕分けながら、なら、しかたない、と切り出した。
「知っていると思うが、俺もひとつ自己紹介をしてやろう。櫻寮で寮長をしているわけだが、俺は、俺のものにちょっかいを出されることが死ぬほど嫌いなんだ」
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