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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 14ー12
「そこまでおまえを怖がらせるつもりはなかったんだが、悪かった」
それぞれでプリントをまとめていた茅野が、さらりと謝罪を口にする。視線を向けた先で、茅野が苦笑を浮かべた。
見慣れた、優しくて頼りになる、最上級生の顔。
「また成瀬に自分のことを棚上げして、なんだかんだと言われそうだな。あぁ、篠原も、あれは本当に悪気があったわけじゃないんだ。配慮がないと成瀬に散々なじられていたから、勘弁してやってくれ」
「いえ、それは……」
そこでようやく、どうにかそれらしいことを口にしようと思うことができた。
そもそも、本当に、なにをされたわけでもないのだ。それでも、心配して、気にかけてもらっている。十分すぎるくらいだ。
「その、勝手に俺が驚いただけなので」
むしろ、すみません、と告げると、はは、と軽く茅野が笑った。プリントを確認しながら、続ける。
「たまにな。たむろしているやつらがいるんだ」
「さっきの先輩たちみたいに、ですか?」
「そうだ。まぁ、あいつらだけではなく、ほかにも出入りしている人間はいるようだが」
相槌を打ちながら、次の原稿をセットする。今度はきちんと数を入力することができた。
「なにをされるわけではなくても、ガラの悪い上級生がいたら嫌だろう。ふたりでやるほうがはかどるわけだし、次は誰かに声をかけてもいいかもしれないな」
自分から誰かを誘う練習だ、と軽口の調子で告げられて、曖昧に笑みを浮かべる。
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