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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 14ー13

「狭い寮の中でも死角はあるんだ。さすがに学内すべてを安全と言い切るほど、盲目にはなれなくてな。おまえたちには申し訳ない話だが」 「あ、……いえ、本当に、そんなことは、ない、です」  本心で、行人は否定した。自分が、それなり以上に安心してこの学園で過ごすことができているのは、この人たちがいるからだ。 「俺、兄が、……だいぶ年は離れてるので、茅野さんたちともまったく重なってはないんですけど、ここの卒業生なんです。それで、兄がいたころは、なんというか、すごくアルファ優位の場所だったそうで」  だから、たとえベータと偽ったとしても、自分には過ごしにくい場所だろうと、はじめのころはいたく心配してくれていた。  そのことが鬱陶しくもあったのだが、入学して最初の長期休暇で帰った行人と顔を合わせたときに、随分と変わったのだな、とほっとしたふうに笑っていた。  そういう場所になったのは、変えてくれた人たちがいたからで、自分は運が良かった。そう思っている。 「そうだろうな。お兄さんが何年前に出ているのかは知らないが、俺が中等部に入ったばかりのころも、そんな感じだった。想像はつく」 「はい。でも、だから、俺は今が続いたらいいなって思ってます」

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