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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 15ー3
「あぁ」
本人に聞けばいいのに、と思いながら、なんでもない世間話の調子で応じる。
「いつもの喧嘩だけど、やりすぎたらしいよ。でも、利き手じゃないほうでやっただけまともだったと思うし、大丈夫じゃない?」
「なら、いいけど。……いや、よくはないかもだけど、篠原さんぶつぶつ言ってたから聞きづらくて」
「しかたないな」
皓太が相手だと愚痴をこぼしやすいのだろうが、適度なところでやめるように言っておかないと。
そう決めて、気にしなくていいから、と改めて請け負った。
「べつに今回がはじめてでもないだろ? ほら、あいつ、そういうところ雑だから」
「そうなんだけど。時期が時期だからちょっと気になって。でも、成瀬さんがちゃんと知ってるなら、いいや。ありがとう」
納得した顔で頷くと、じゃあ、と談話室のほうに向かって行く。ひとつ声の増えた和やかな会話を背に、成瀬も階段を上り始めた。
――ちゃんと知ってる、か。
まぁ、たしかに、最近の中では一番詳細に把握しているかもしれない。能動的に知ろうとした結果ではなく、偶然の産物ではあるのだけれど。
――でも、皓太の意識が行人たちのほうに向いてるのはありがたいな。
いいことだと思っていることも本当だ。ただ、自分のことばかりを気にされても困るし、向原たちとはまた違う意味で誤魔化しづらいのだ。
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