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パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 15ー4

 そもそも、心配されるようなことは、なにもないつもりなのだが。薬の副作用のほうも想定内のレベルで済んでいるし、それに――。 「……今日も帰ってない、か」  自分の部屋の隣の扉を見やる。物音がしようがしまいが、中に人がいるかどうかくらいはわかる。そうでなくても、あの男の気配は目立つのだ。  ――なにがやめてやってもいい、だ。  自分がなにを言ったくらいで、向原が行動を変えると期待していたわけではないが、あいかわらず向こうは向こうで好き放題をしている。  まぁ、それも、自分が口を出せた話でもないが。それにしても、と溜息を呑み込んで自室の鍵を回す。  ――なんで、あんなこと言おうとしたんだろうな。  途中で我に返って言わなかっただけ、良しとするしかないのだろうが、本当に気をつけないといけない。 「なんだ、今日は大人しく寮にいるんだな」 「……茅野」  扉を開けて中に入ろうとしたところにかかった声に、扉を閉めて振り返る。近づいてきた茅野が、ほんの少し驚いたような顔をした。 「おまえ、今、気がついていなかっただろう」

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